……ズシリと重い。

これで一体なにをしようとしてるんだ?

相手はクラスメイトだぞ?


ヘンな冷や汗が身体から出てきて、包丁を持つ手が震えた。


「平気だよ。怖いのは最初だけ」

日野沢はそう言って大きな菜切り包丁を俺に向けて勢いよく投げた。


それはビュンッと俺の横を通りすぎて、背後でグサッと深く刺さった音がした。

それと同時に吹き出す血の雨。


そこにいたのはクラスメイトの斎藤。

白目をむいて、生気のない顔。手には金切り鋏(かなきりばさみ)を持っていて、俺に振り下ろす寸前だった。


日野沢が投げた包丁は斎藤の頭に刺さって、そのままバタンッと床に斎藤が倒れる。


「殺すんじゃない。壊すだけだよ」


そう言った日野沢の顔がアリスと重なって見えた。