そんな中、ギィィと鈍い音が響く。

音のするほうへみんなが注目すると、さきほど肝試しをしようと言っていた西が校舎の玄関扉を開けていた。


「鍵かかってないよ。肝試しできんじゃん」

お調子者で少し空気が読めない西をみんなが呆れた顔で見ていた。


「校舎には入らないほうがいいよ。セキュリティシステムとか作動しちゃったら大変だし」

「そーだよ。お前のせいで明日先生に怒られたらどーするんだよ」

「平気平気。校門だって開いてたんだし、閉め忘れたヤツのほうが悪いって……」

そして西は扉を半分開けてなぜか止まる。


「……誰かいる」

顔を強張らせて下駄箱を指さした。


「は?誰かって?」

「わかんないけど、今そこを黒いなにかが通りすぎた」

「そうやってみんなの気を引きたいだけでしょ。本当にいい加減にして」


西は普段からもわりと嘘をつくタイプだから、みんな信じていなかった。

でも演技にしては上手すぎるっていうか……。


「本当だって!いま……うわあああ!!」


その時、バンッ!と玄関扉が勝手に両方開いて、西が引っ張られるように暗闇の中へと引きずられていく。


……え……。

一瞬のことで誰も動けなかった。

ただ、分かっているのは目の前でありえない現象が起こったこと。

扉の向こう側の暗闇は今も俺たちに向いて開いているということ。