「なにがおかしいの?」

「あーごめんごめん。笑うの我慢してたんだけどつい」

「……っ!」


渡辺が日野沢に手を上げようとしたのを見て、
その手を正人が掴んだ。


「離しなさいよ!男子はみんなこの女に甘いのよ!ちょっとスタイルがいいからってちやほやするんだから!」

次は自分が死ぬかもしれない恐怖。


だんだんと余裕がなくなって、みんな普段どおりの自分じゃいられなくなっている。


理科室から帰ってきた今村はまだうわ言のようにあの言葉を言ってるし、女子の笹谷と古澤は震えながら膝をかかえてるだけ。


男子の寺田、橋元、鈴木も自分は有栖川に嫌がらせはしてないって、この恐怖から逃れようと必死だった。


「あのさ無関係の人間なんていないんだよ?なにもしなかったってことは笑って見てたことと同じなの」

日野沢の言葉にみんなが黙る。


そう、俺たちは全員加害者だ。