「あーあ。死んじゃった」

みんな放心状態の中、アリスが言う。


「私、汚いオモチャっていらないのよね。黒焦げでもなにかに使えるかしら?」

なんて、ひとり能天気に首を傾げている。


変わり果てたふたりを見て今村がその場にしゃがみこんだ。

精神が壊れてしまったのか「私は悪くない……私は悪くない」とずっと繰り返し言っている。


「私ね、三人の中で一番最初にアナタを殺そうとしてたのよ?でもね、今回は見逃してあげる。
あのふたりが十分苦しんだもの」

「悪くない……私は悪くない……」

ネジが外れてしまった今村を見てアリスが鼻で笑う。


「だけど殺さないとは言ってないからね。これは私の復讐なのよ。華ちゃんを傷つけた人を私は許さないから」


アリスがそう言うと閉ざされていた理科室のドアが簡単に開いた。

そこからペタペタを鼻唄を歌いながらアリスは廊下へと出る。


「待て!」

そう叫んだのは俺だった。


「……有栖川はどこにいる?」

本物のアリスを見つけなければこのゲームは終わらない。

ここで人形のアリスを縛りつけたところで、なにも変わらないことはもう分かっている。


「ふふ、また逢いましょう。篠原潤くん。
私も貴方のことが大好きよ」


そんな意味深な言葉を残して、アリスは暗闇の廊下に消えた。