「あ、ごめんなさい。目線を合わせなきゃ失礼よね。これでいいかしら?」
その人形の身体がふわりと浮いて、理科室の机の上にそのまま立った。
信じられないけど、ここではその言葉は通用しない。
それにこの人形は俺も含めた2年1組のクラス全員に見覚えがあった。
「やっぱり有栖川華子の仕業かよ」
諏訪野がギリッと唇を噛む。
そう、この人形は有栖川が常に持っていた人形だった。
我が子のようにいつも膝に乗せたりクシで髪をとかしたりして、人形と会話をしてることは日常茶飯事。
だからみんな不気味だって有栖川を普通の人のカテゴリーから外して、いじめてた。
可哀想だって同情してた人もいたけど、人形に話しかけたり笑いかけたりしてる姿はやっぱりオカシイというか……。
そういう目で見られてしまうのも仕方ないよねって、結局有栖川を擁護(ようご)する人はいなかった。



