はじまりのアリス






また暗闇の廊下。

時間が進んでいないから月の位置がまったく変わらなくて。夜が明けないことがこんなに恐怖だなんて知らなかった。


「……絶対に日野沢は許さない。帰ったら泣かせるぐらいボコってやる」

相当プライドを傷つけられたのか、今村がずっとブツブツと文句を言っていた。


もし、これが有栖川の復讐ならば全員殺せばそれで終わりのはず。

それとも簡単に殺したら意味がないほど、有栖川の恨みが深いってことなのだろうか。

どっちにしてもまずは本物のアリスに近づくためにはみんなを操り、放送を使って俺たちを誘導しているアイツに会わなきゃいけない。


そんなことを考えながら理科室に向かっていると、隣でカチッカチと奇妙な音がした。


「なにしてんだよ?」

諏訪野はまたバットを抱えて、右手で銀色のなにかを開いたり閉じたりしていた。


「サバイバルナイフだよ」

「なんでそんなもの持って……」

「護身用にな。まあ、こんな風に役に立つ日が来るとは思わなかったけど」


きっと諏訪野は敵と判断すれば、そのナイフで俺のことも容赦なく刺せるヤツだ。

誰を信用していいのか分からない。

俺が信頼できるのは残っているクラスメイトの中で正人と美織だけだ。