はじまりのアリス



わざわざアリスが〝死んでもいい人〟と言ったのは俺たちを混乱させるためじゃない。

きっと教室を出れば……。


「死んでもいい人ってことはさ……理科室に行ったら死ぬって意味だよな?」

ずっと黙っていた男子の寺田がポツリと言った。


死ぬかどうかはわからない。

でも確実に危険な目には遭うと思う。

アリスが言っているオモチャが死んだ人のことを指すならば、西や沢田のように他のクラスメイトたちがまだ沢山いるのだから。


「じゃあ、行くのは諏訪野と今村と川島と横田。そして潤の5人でいいじゃない」

日野沢が長い足を組ながら言った。


「はあ?なんで勝手にアンタが決めてんの?前から思ってたけどアンタって生意気っていうか、その、人を見下した態度が気に食わなかったんだよね」

今村が日野沢に詰め寄った。


……ああ、また言い争いがはじまる。

もうダメだ。時間がないのに。

すると、日野沢は今村の胸元をグッと掴んだ。


「ここでじっとしてるなんてできないの。それともいつも威張ってるくせにビビりって自分のことを言ったの?」

「なっ……」

「早く行って!喧嘩なら帰ってきてからたくさんしてあげる」


帰ってこれたらの話だけど……と、言ってもいない日野沢の心の声が聞こえた気がした。