「し、死んだ人間が動くわけないだろ……っ?」

それを聞いた日野沢の口角がわずかに右上がりになったのを俺は見逃さなかった。


「動いてたのよ。実際に。それに潤も諏訪野も見たと思うけど、天井から田上を拐っていったのは誰?ねえ、みんなに教えてあげなきゃ」

あの時、バサッと逆さまに宙吊りになって、ニタッと俺たちを見て笑ったのは……。


「沢田だった」

そう、校門で殺されたはずのクラスメイトのひとり。


「……うう。なんで繭(まゆ)が死ななきゃいけなかったの?なんでこんなことになっちゃったの……。もう嫌……帰りたい……早く帰りたい」

沢田の友達だった笹谷が泣き崩れた。


きっとずっと恐怖と戦いながら友達の死を受け入れられずに。急にプツンと張りつめていた糸が切れてしまったんだろう。

そんな笹谷を見て日野沢が静かに近づく。


「帰りたいならまずこのゲームを理解しなくちゃ。ほら、噂をすれば」

日野沢が指をさしたのはスピーカー。

またザザザーと嫌な音が教室に響いた。