「あら?覚えてないの?入学式のこと」
「……は?入学式?」
有栖川はまるで当時を思い出すようにうっとりとした。
「私たち席順が前後だったでしょ?その時、篠原くんは私の名前を知ってこう言ったの」
「………」
「有栖川華子?アリスに花なんて、おとぎ話みたいな名前だなって」
ぜんぜん覚えていない。
だけど恐らく俺はべつに大した意味もなく、新しい高校生活に浮かれてそんなことを言ってしまったんだろう。
「それだけの理由で俺を……?」
「それだけの理由があれば恋に落ちるのなんて簡単よ」
有栖川はそう言って俺が死神……いや、美織から奪った鍵を自分の胸へと当てた。
「この鍵は私の心の鍵。篠原くんが私の世界に色を付けたの。だから責任を取ってね?」
「……っ」
無理やり唇を重ねられて、俺はジタバタと暴れたけど強い力で押さえつけてくる有栖川の身体はビクともしない。



