はじまりのアリス



……スタ、スタ。

有栖川が濡れた瞳で俺にゆっくりと歩み寄ってくる。


「みんな私がいじめのせいで死んだって思ってるけど違うよ?私がベランダから落ちたのはね……
篠原くん、貴方のせいよ」

そう言って有栖川が俺の頬を指でなぞった。


ゾクッとする鳥肌。

逃れたいのに身体が思うように動かない。


「あんな幼稚ないじめで私が傷つくはずがない。人形のアリスだって、ベランダから投げられてもボロボロにされても直せるし、またキレイにすることはできる」

「………」


「でもね、どんなに望んでも手に入らないものがひとつだけあった」

有栖川が俺の唇に触れる。


「あの日、あの時私をかばう早川さんを見て貴方はどう思った?見直した?惚れ直した?好きだなって再確認した?」

「………」

「私はね、その視線が欲しかったの」


――『だってこれは有栖川さんの欲望を叶えるためのゲーム』

日野沢の言葉がふと頭をよぎった。