はじまりのアリス



――ガラッ!

俺は美術室のドアを勢いよく開けた。

黒いフードの死神がゆっくりとこっちを見た。


……空気が重い。

息をするのも躊躇うほど。


夜の美術室は他の部屋よりももっと不気味さが増して、それはデッサン用の白い石膏像のせいなのか、油絵の絵の具の匂いのせいなのかは分からない。


死神は黙って俺たちを見つめている。


フードが深くて顔は見えない。

だけど、先ほどの部位たちを見てしまったせいか、人の姿をしていて少しだけホッとした。

そして首にはアリスの言ってたとおり、キラリと光る銀色の鍵。


「お前……有栖川なのか?」


アリスは鍵があれば華ちゃんに会えると言っていた。

だけど、この死神と呼ばれる黒フードが有栖川華子じゃない保証はどこにもない。


息苦しい雰囲気。


「……答えろ!」

ずっと黙っている死神に俺は強く叫んだ。


すると、スッと死神が俺に向かって手を伸ばす。


「……潤っ」

とっさに隣の美織が俺の腕にしがみついた。


その瞬間、カタカタと妙な音が。