はじまりのアリス



磨りガラスから見える無数の手。


……あいつらが追いついてきたっ。


「だ、大丈夫!鍵はちゃんとかけたから!」

正人が現実逃避するように苦笑いをしていた。
すると、すかさず日野沢がそれを打ち砕く。


「教室=安全っていう定理は2年1組限定の話。鍵をかけていたとしてもここはもう襲っていい場所なの」

ゴクリ、と緊張感が漂う。


「くるよ。壊してでも」


日野沢の言葉どおりドンッドンッ!と強い衝撃を受け続けているドアが歪んでいく。


一斉に中に入り込まれたら逃げ場がない。

……どうする?どうする?


「きゃああ。あそこっ!」

美織の悲鳴。

指をさす方向は音楽室の上の小窓。

わずかに開いている場所から生首が見えて、ギロリと俺たちを睨みながら中に入ろうとしている。


耳をすますと聞こえる無数の破壊音。

ドアや窓だけじゃない。

俺たちは完全に囲まれている。