「悲しんでる暇はないよ。もっともっと楽しいことしなきゃ」


俺たちの背後で聞こえる声。

スピーカー越しではなく、とてもクリアに。そして憎らしいぐらい鮮明にその声はB校舎の廊下へと響き渡っている。


「ひぃぃっ……」

その姿を初めて見た正人は衝撃的すぎて腰を抜かせた。


「ふふ。また直接会えて嬉しいわ。篠原潤くん?」


ペタペタッ……と暗闇に浮かび上がる裸足の足。

そして白い肌に黒い髪。
赤銅色(しゃくどういろ)の瞳。

狂気に満ちた小さなアリスが俺を見て笑った。


――すると、アリスの背後に人影が。


銀色のサバイバルナイフはアリスの頭を一直線に狙うが、まるで後ろに目があるようにアリスはふわりと浮いてそれをかわした。


「あら?まだ生きていたの?」

上から見下すようにアリスは諏訪野を見つめる。


「てめえは邪魔だ。さっさと死ね」


いつの間にか日野沢も合流して、生き残っている俺たちとアリスのビリビリするような空気が身体に走る。


「きゃははは。私が死ぬわけないわ!まだ全然足りないもの」


ゾクッとするような視線。

そしてアリスは両手を広げて叫んだ。


「さあ、最後のゲームよ!もっと私と遊びましょう」