「ぷっ。あはは。相変わらず甘いなあ。殴るんじゃなくて殺してくれてもいいんだよ?」
「……っ」
「私がこのゲームに参加してる理由はひとつ。
人形の手助けをしてるわけでもないし有栖川さんの味方になったわけでもない」
日野沢はそう言って俺から離れた。
そして窓際に立って、コンピューター室から見える黄色い満月に目を向けた。
「うちの家庭環境ってこの状況よりずっとドロドロしてて醜くて。だからいつもストレス発散のためにゾンビを殺しまくるゲームばっかりしてた」
日野沢がリストカットの傷痕を触る。
「あの現実に戻るくらいなら、繰り返しこの世界にいるほうがずっといい」
日野沢がどんな家庭環境に育って、どんな苦しみを抱えていたのか俺には分からない。でも。
「それでみんなが何回も死んでオモチャにされてもいいって言うのかよ?」
日野沢のことは苦手だし気に食わない。
だけど他のクラスメイトより頭はきれるし運動神経はいいし、なによりすぐに有栖川を見つけた。
そんな日野沢がもっと協力的に俺たちに力を貸してくれていたら……このゲームはこんなに繰り返すことはなかったんじゃないのか?
有栖川をみんなで見つけて、こんな地獄みたいな光景を終わらせて、あの普通の日常に戻れたんじゃないのかよ……?



