「例の放火犯が見付かったって連絡があってさ。本当に悪かった……大事な日なのに、一緒にいてやれなくて」

「……え」



“大事な日”って。

おもむろにあたしから離れた那央は、少し走ると屈んで何かを拾い上げた。

さっき、男を追い掛ける時に落としたままだったらしいそれは──。



「やべ。さっき慌てて放り投げたから、ちょっと汚くなっちまった」

「那央、それ……」

「呼び出しがなかったら、一眠りしてから買いに行こうと思ってたんだけどさ」



はい、と差し出されたものは、透明なセロファンと赤いリボンでラッピングされた、綺麗な花束。

サーモンピンクのバラとかすみ草、そしてシロツメクサの花があしらわれていた。

その色とりどりの花が、込み上げる涙でぼやけていく。



「覚えてないかと思った……」

「んなわけねーだろ」



クスッと笑った那央は、表情を引き締めると、あたしをまっすぐ見つめる。



「寂しい想いさせてばっかりでごめんな。でも、俺はいつだって縁のこと愛してるから」

「……うん」

「これからも、俺と一緒にいてください」