彼=浮気【完】



『別れたから何もする気が起きないのか?』

「にぃは俺の全てだった。今となっては自業自得だけど」

『へー。でも、何もしないで引きこもる、ってのもな?』

「わかってる。大学は辞めて、働こうって考えてる」

『なんでまた?』

「…にぃを迎えに行きたいんだ。けど、今のままの俺じゃ、にぃを幸せにできない。自分を変える必要がある」

『なら、いい話があるぞ』

「いい話?」

『俺の家は、一体どんな家ですか』

「……そういうことね」

月希の家は相当な金持ち。

大手のブランドメーカー《Venus(ビーナス)》を経営してて、海外にも支社がある。

洋服、時計、アクセサリー、ドレス…他にも数々の物をデザインしている。

今、世界中で大人気のブランド。

つまり月希はそこの次期社長ってこと。

『明日、俺社長になる』

「は?」

『親父からの提案で。もう成人してんだし、そろそろ継いでほしいらしい。そんで、明日パーティーがあんだけど、そこにお前を招待したい』

「…どういうこと?」

『まぁ、来たらわかる。来いよ?場所はここらで一番デカいホテルあるだろ?そこのパーティー会場。時間は7時。必ず来い。じゃ』

それだけいうと、勝手に切られた。

「………強引さは変わらないね」

面倒くさいけど、これこれで祝うべきかな。

いろいろ世話になった親友だし。

今日は早めに寝ようかな。

とりあえず、風呂に入ってカップ麺食べて早めに寝た。

ピピピッ ピピピッ

「………時間か」

パーティーに行くのは夜だし、大丈夫。

車で行けば1時間ほどで着く。

今は9時。

ゆっくりしててもいいか。

……今日はちゃんとご飯食べようかな。

俺はパンを2枚取り出し、トースターで焼いた。

目玉焼きを作り、ベーコンを焼いてパンにのせる。

コーヒーも入れて、テレビの前のテーブルに置いた。

………いつぶりだろう?

こんなにまともな食事をとったのは。

テレビをつけて、パンを食べながらみる。

『今日、大手のブランドメーカー《Venus》の新しい社長が決まりました。新しい社長は、現社長の……』

へー、ついに月希も有名人か。

あ、なら大学辞めるのかぁ。

惜しいね、成績トップだったのに。

まぁ、トップだからこそ社長になれるんだろうけどね。

ほんと、月希の親父さんは凄い人だ。

なんせ一代で会社をあんなにもデカくしたんだから。

今じゃ知らない人はいないぐらい。

たくさんの人気ブランドの中で、7年連続1位を保ってる。

ほんと、凄い会社…。