聞き終えた新之助は。
考え込むように顎に手を当てていた。
そんな彼の様子を窺いながら、すっかり冷えてしまった番茶を啜ると、話し疲れて渇いた喉に心地良かった。
「いわゆる、妖(あやかし)・物の怪と言われるものだろうか」
自問するように言った新之助の顔を見ると、まだ視線を伏せたまま己の考えの中に沈んでいる様子だった。
「やっぱり信じられないよね?」
恐る恐る声をかけたゆらの声に顔を上げると首を横に振った。
「信じられない訳ではないんだ。ただ、もし本当に物の怪に攫われたんだとしたら、おしずさんを見付けるのは難しいだろうなって思うんだ」
「それは……そうだよね……。風間さんは、妖だと思う?」
すると新之助は小さく微笑んだ。
「妖・物の怪・幽霊、そう言われるものの類は結構人の身近にいるものだよ。現に、俺の友達には河童がいるしね」
「へ?河童……」
「そう、河童」
いや、この美形の口から河童って……。
今度はゆらが呆気に取られる番だった。
どういう経緯で河童と出会い、友達になったのか。
すごく聞きたくて、うずうずしてしまう。
当の新之助は、その河童のことを思い出してでもいるのか、懐かしそうな眼差しをあらぬほうに向けている。
「す、すごいね。わたしも友達になりたいなあ」
多少の戸惑いはあるものの、それは正直な気持ちだった。
だって、河童だよ!?
そんなゆらに、新之助はくすくす笑った。
「いつか、ゆらさんにも紹介出来るといいけれど」
そう言いながら、新之助は自分の中に生まれた感傷を吐き出すように大きく息をついた。
「それよりも今はおしずさんだよ」
こくりと頷いたゆらは居住まいを正した。
「とりあえず、まずは道場に行って調べてみるしかないかな」
「お師匠さまや師範代にも話してみようか?」
黙ってしまった新之助の様子を窺うように言ったゆらに、新之助は首を横に振った。
「いや。闇雲に話して、却って不安にさせてしまったら申し訳ない。俺たちである程度裏を取ってからでないと……。特に柳生どのは、今の段階で確かでない情報を聞くのはお辛いだろう」
「そ、そっか……」
新之助は前へ突っ走ることばかりの自分と違う。
短慮だと宗明にもよく言われるが、まったくその通りだと、このような時には自覚する。けれどだからと言って、その性分がすぐに改善されるはずもなく、ゆらは自分の浅はかさをただ恥じるばかりだった。
どうしても、口から出る言葉に、頭の考えるのが追いつかない。
それは頭が足りないからというよりも、単に世間ずれしていないから、人生の経験値が少ないから、ということが要因のほとんどであろうが、ゆら本人としても人知れず思い悩んでいることではあった。
考え込むように顎に手を当てていた。
そんな彼の様子を窺いながら、すっかり冷えてしまった番茶を啜ると、話し疲れて渇いた喉に心地良かった。
「いわゆる、妖(あやかし)・物の怪と言われるものだろうか」
自問するように言った新之助の顔を見ると、まだ視線を伏せたまま己の考えの中に沈んでいる様子だった。
「やっぱり信じられないよね?」
恐る恐る声をかけたゆらの声に顔を上げると首を横に振った。
「信じられない訳ではないんだ。ただ、もし本当に物の怪に攫われたんだとしたら、おしずさんを見付けるのは難しいだろうなって思うんだ」
「それは……そうだよね……。風間さんは、妖だと思う?」
すると新之助は小さく微笑んだ。
「妖・物の怪・幽霊、そう言われるものの類は結構人の身近にいるものだよ。現に、俺の友達には河童がいるしね」
「へ?河童……」
「そう、河童」
いや、この美形の口から河童って……。
今度はゆらが呆気に取られる番だった。
どういう経緯で河童と出会い、友達になったのか。
すごく聞きたくて、うずうずしてしまう。
当の新之助は、その河童のことを思い出してでもいるのか、懐かしそうな眼差しをあらぬほうに向けている。
「す、すごいね。わたしも友達になりたいなあ」
多少の戸惑いはあるものの、それは正直な気持ちだった。
だって、河童だよ!?
そんなゆらに、新之助はくすくす笑った。
「いつか、ゆらさんにも紹介出来るといいけれど」
そう言いながら、新之助は自分の中に生まれた感傷を吐き出すように大きく息をついた。
「それよりも今はおしずさんだよ」
こくりと頷いたゆらは居住まいを正した。
「とりあえず、まずは道場に行って調べてみるしかないかな」
「お師匠さまや師範代にも話してみようか?」
黙ってしまった新之助の様子を窺うように言ったゆらに、新之助は首を横に振った。
「いや。闇雲に話して、却って不安にさせてしまったら申し訳ない。俺たちである程度裏を取ってからでないと……。特に柳生どのは、今の段階で確かでない情報を聞くのはお辛いだろう」
「そ、そっか……」
新之助は前へ突っ走ることばかりの自分と違う。
短慮だと宗明にもよく言われるが、まったくその通りだと、このような時には自覚する。けれどだからと言って、その性分がすぐに改善されるはずもなく、ゆらは自分の浅はかさをただ恥じるばかりだった。
どうしても、口から出る言葉に、頭の考えるのが追いつかない。
それは頭が足りないからというよりも、単に世間ずれしていないから、人生の経験値が少ないから、ということが要因のほとんどであろうが、ゆら本人としても人知れず思い悩んでいることではあった。


