『おはなしてもね、みんなしらんぷりだよ』

「ああっ、頭の中、読んだな??」

『てへっ』


もぞもぞと身体を動かしながら、イクラは私を見上げて笑った。

相変わらず体操服は少し汚れていて、今日は帽子のゴムを首にかけている。


「じゃあイクラ、―― 何で私を探していたの?」

『あいたかったからにきまってるじゃん』


会いたかったから……。

ま、まさか、これって憑かれてるってこと??

うーん。

段々と生気を吸い取られて、取殺されちゃったりしないよね??


『とり、ころす??』

「あ、いやあの……」

『イクラ、ひよこさわったことあるよ』

「んんっ??」

『ひよこはかわいいのにしろくなるとだめだ……。くびがかくかくしてこわい…』


イクラはそのかくかくした動きを真似ながら、小さな眉間にきゅーっと皺を寄せた。


もしかして、ニワトリ ―――??

何となく……。小さなイクラが経験したであろうことが想像できてしまった。


「怖かったんだ」

『……こわかった』


肩の力が抜けていく。

うん、イクラはやっぱり怖くない。


「ごめんごめん、そうじゃなくて、――。
私を探してくれてたんでしょう? それは何でかなって思ったの」


イクラは、うん、と大きく頷いた。


『イクラね、ママにあいたい』

「ママ??」

『ママにあいたいけどママどこにいるかわかんないの。
だれにきいたらいいかわかんないの。
みことは、ぼく、みえるんでしょ?』