「瑛理奈……」
「応援してるからさ、頑張れ」
何だ、―― 瑛理奈にはバレてたんだ。
それなのに何も聞かないでいてくれたことが嬉しかったりする。
男の子ばかりの兄弟で、竹を割ったようなサバサバした性格の割に実はものすごく繊細で女の子らしかったりする瑛理奈。
「頑張れない。っていうか……頑張り方がわかんない」
急に甘えたくなった私は、瑛理奈の腕を取り身体ごとくっ付いてみる。
「何、何、どうしたのよ」
かろうじて携帯の連絡先を交換したけれど。
メールしようかどうしようか、二時間も悩んだ挙句、結局出来なかった、私。
「どうしたもこうしたも、全部わかんない」
「それじゃあ私もわかんないって」
ふははっと吹き出して
「藤木はいいやつだよ??」
へなへなとしゃがみ込んでしまった私の肩を抱き寄せた。
「年中の時にさ、バレンタインあげたんだよね」
「チョコレート?」
「そっ、――。
コンビニでオカンが買った300円のやつ。
そしたらさ、ホワイトデーのお返しがすっごい豪華で」
その当時の事を思い出したかのように、瑛理奈は可笑しそうに笑い出す。
「私の好きな水色のグッズでいっぱいだったんだ。
勿論、買ったのは藤木のオカンなんだけどさ、水色が好きとか覚えててくれたのかなあって思ったんだ」
「そうなんだ……」
「昔からあいつはそう、――。
嫌みなく痒い所に手が届くやつなんだよ」

