イクラ……って、――
もしかして、もしかして……。
――――――!!
ゆ、ゆ、ゆ、幽霊っ??
「ひっ!!」
八幡さんなんかで雨宿りしたからっ!!
「わ、わ、わ……」
……私、幽霊と話してんの??
冷たい水を浴びせられたかのように、身体中が一瞬で硬直する。
眼球だけがきょろきょろと動き、目が回りそうだ。
もしかして私、―― 憑りつかれたってこと??
「……っ!!」
子供の幽霊なんて、怖すぎる!!
に、逃げなきゃっ!
思わず後退りして、ドアのノブに手をかけた。
その刹那、――
『ぼく、こわくないもん!!』
――――!!
男の子は頬を丸く膨らませて眉間に大きな皺を寄せて私を見ていた。
『ぼくはこわくないよっ』
「……わた、私の考えてること、わ、わかるのっ?」
「ちゃんときこえてるからわかるもんっ」
えっと、―――
『イクラ』って名前だったっけ?
「イクラちゃん……。か、かわいいお名前だね」
あ、名前で呼んだら怖くない、かも……。
『わかんない』
「え??」
『イクラがおなまえなのかな。わかんないや』
「そっ、そっか……」