「……ただいま……ッ」 入ってすぐに鍵を掛けて、玄関のドアにもたれかかった。 冷たい扉に触れたその背中が、汗で濡れている。息が乱れて肩が上下している。 ただいまなんて言っても、この部屋に待つ人なんて誰もいない。 けど大丈夫。 あたしだけの『砦』である、この場所さえあれば十分だった。