「私…誰にでもキスなんてしません…。あのキスが、生まれて初めてです」 サーッと血の気が引いた。 あれがファーストキス。 つまりこんな冴えないおっさんに大事なファーストキスを捧げたって事? 「ごめんね……。夏依ちゃん」 咄嗟に謝罪が漏れた。 可哀想だ。 こんな三十路の人となんて……夏依ちゃんが気の毒過ぎる。 「先生……言わないと、わからないんですか?察してくれないんですか……?」 何の意図でそんな事を言ってるのか、本当にわからなくて……。 「ごめん。わからない……」 と、答えた。