康平は、コートを出ながら村田に訊いた。

「俺さぁ、右手を挙げてなかったけど……村田が見間違えたんだよな?」

「何言ってんのよ! これからは右手を挙げなくてもパスを送るからさぁ、どんどんシュートしてよね」

 村田は上機嫌で答えていた。



 次のシードである四組にも勝った一組は、五組と六組の勝った方と決勝で対戦する事になった。


 昼食を摂りに教室に向かった一組メンバーだったが、廊下で有馬と白鳥の二人とすれ違った。有馬が康平に声を掛ける。

「康平、お前ら決勝なんだってな! じゃあ俺等五組と当たっちまうな」

「あれ、お前らこれから六組と試合なんじゃねぇの?」

「うちらのクラスはバスケ部が四人いるしさぁ……それに俺もいるから楽勝だよ。向こうのバスケ部は、内海さんの妹一人だって聞いてるしよ」

 『内海さんの妹』とは、綾香の事である。