「うまいなー。佐波、料理うまくなったよな」


ゼンさんが褒めてくれるんだけど……。


「え?前はひどかったって意味で?」


「そんなことない。前もうまかったが、単純に腕を上げたと思うから褒めたんだ」


その褒め方、上司っぽいですね。

いや、元々上司でしたけど。
っつうか、上司と部下だった時、滅多に褒めてもらえませんでしたけど。

この人は信頼する部下には格別点が辛い。

そして、奥さんには甘い。
甘すぎるほど。


「この前作ってくれたし、ゼンさん、料理フツーにできるんでしょ?一人暮らし長かったもんね」


「まあ、できなくはないな。好んでやらないが」


ゼンさんが渋い顔になる。


「基本作る暇がないし、女に食べさせるとかキャラじゃないだろう?俺は」


まー、ゼンさんがまめまめしいのはわかるけど、過去の彼女にゴハン作ってあげたとかは想像できない。