「初期の乳ガン。本当に初期だから、大きな手術にはならない。早く取ってしまおうってことになった」


「そうか」


ガンではあったわけだから、「よかった」とは言えない。でも、早い段階で見つけられたことはいいことだ。


「右の乳房は半分切除になるけど、それで悪いもんを一掃できるなら御の字だろ」


ゼンさんは感情を差し挟まないよう平坦な声音で言って、またすぐに立ち上がった。


「顔、見てこよう」


お義母さんの居室に行こうという意味だ。
社長が勝手知ったる様子で先に立って歩き出した。


私は眠そうにしているみなみを抱き上げ、さっと抱っこひもに入れた。
お義母さんと会う間は機嫌よくしていてほしい。
二人の後について進む。

施設は三階建てで敷地面積が広い。
お義母さんの居室は二階だった。フロアの職員室で挨拶をすると、職員さんがひとり同行してくれた。