氷野くんはこれ以上追及する気はないようで、江藤くんからビニール袋を取り上げてキッチンへ向かった。
感じ悪いぞ蒼ー!という江藤くんの声も、完全に無視だ。
……よかった。
あんなろこつに変な態度をとったのは氷野くんにドキドキして、どうしようもなくなったからであって。
こんなときだけ、氷野くんが口数の少ない人でよかったと思ってしまった。
「深刻そうな顔してどうしたのー?」
「あ、いえ、なにも……」
「蒼となにかあったの?」
「そう思ってるのはわたしだけなので……その言い方は違います」
わたしの言葉に、江藤くんはびっくりしたように目を見開いた。