《キャラバト》白衣の保険医と黒い翼


「教師なの?女医じゃなくて?」

白衣を着たままだから間違えるのも無理はないだろう。

細身の優男は、どこか優雅に近づいてくる。

もっと若いかと思ったが、だいたい朱祢と同じ――20代か。


「保健室のせんせーだからねぇ」

「へぇー…」


随分と整った顔立ちをしている男だ。
闇夜に照らされても全く見劣りしない。いや、とても栄える容姿。

じっと見つめられているのがわかり、首裏がじわりと焼かれるような感覚に陥った。


「(――なんだ、これ?)」

「お姉さん、とっても美味しそうだね」


「はぁ!?」


いきなり何をいってるんだ、と思って睨む。



「っ、」



にやりと妖しく彼は笑った。


その目に、引き寄せられる。

朱祢の身体中の細胞が全部、彼の元へ。


「…ぁ…」

「お姉さん綺麗だから、とっても美味しいんだろうな」


腕を広げて、胸の中へ。

ゆっくり、ゆっくりと。

頭の中に靄がかかったように、思考が働かない。


「食前酒がわりに唾液でも頂こうか」


彼は屈んで、己より小さい朱祢の身長に合わせる。