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朱祢は飲みきったペットボトルにまた水を入れ、それを保健室の床にぶちまけた。

丸く広がった水溜まりを暫し眺め、

【空は繋がる。その性質を使い、仲間の元へ】

詠唱する。
鳥ということで空の神とも唄われる彼女は、空は世界に繋がるというのを利用し――移動しようとしているのだ。

水=鏡に空を映し、自分の行きたいところへ望む。

願う。

キラリと水の鏡が光ったのを確認。

「うし、繋がったな」

ニヤリと妖艶に笑った朱祢は、迷うことなく水にサンダルのままジャンプ。

普通なら床に足がつき、水しぶきが舞うはずだが――そんな減少は起きなかった。


まるで穴が開いたように入っていく。


水に濡れることなく、それこそ鏡に吸い込まれたように。

不思議の国のアリス、否、猫型ロボットの通り抜けロープのように。


すうっと落ち、枯れ葉に包まれた地面に盛大に落ちた。


ドンッと白衣が地に濡れ、茶に染まる。