《キャラバト》白衣の保険医と黒い翼


「なあ、それ…」

「これ?俺の武器」

「そうじゃなくて」

気づく。
それは漂うのではなく、放っているのではないか、と。


そしたら、考えたくない答えに朱祢はたどり着いた。


「魔力ってやつか…」


つくづく異国の神々とは相容れない思考だ。
あんなグロいものが信仰の決勝なんて。

確かに日本では血も霊力の一種という考えがあるが、霊力はあんなにグロくない。
目に見えない粒子として、信仰の対象とされている。


「…やってやらぁ」


朱祢は負けず嫌いな性格だ。

一回対峙したものに背なんか向けたくない。


タタタッと走り、ラスクの間合いに入る。

刃に導かれて、だ。

刃自体が意思を持つ神。戦いは彼が、なぎたんが教えてくれる。

肩から頭にかけて切ろうと刃を這わすが、ひらりと踊るように避けられる。

その隙をついて突こうと刃を垂直に持っていくが、流されてしまった。



彼の鎌に。



薄っぺらいくせに耐久力はあるらしく、びくともしない。

「…ちっ」

面倒だ、焼き切っちまえと刃に念じる。


草薙、と言われるこの剣は、火の神としても有名だ。



「へぇ、面白いね」

「だろ?なぎたんに触れないように気を付けろよ」


炎を纏った剣。

めらめらと揺られ、朱祢の髪が炎によって照らされた。