《キャラバト》白衣の保険医と黒い翼


ちゅ、とリップ音が体内に響いて、朱祢は目覚めた。


「――っ!んんぅっ!」


ドンッと胸板を力強く押して、目を見開く。

「わたし…なに、を…」

「痛いなぁ、傷ついちゃうよ」

軽く笑ってる彼を見られない。
無意識だったのだ。

「なに、してるんだ、私は」

ガクガクと身体が震え、心臓が暴れだす。
旦那のいる身としての自覚が足りない。

ごめん、だありん。私――…


「あれ?魔眼が効かないのかな、お姉さん…」


「まがん?」


聞き覚えがない単語に、耳を疑う。


「魔眼はね、相手を魅了する目で――ん?わぉ…おいしーな、お姉さんの唾液。甘くていい味がする」


ぺろ、と舌を唇に這わす。

『体液が抜かれておる』

そう鸞が言っていたのを思い出す。


「まさか…」

この優男が、鸞がいう災厄か。

「あんた、異国の神々?」

「神々?あぁそっか。この国では俺みたいなのを神々って言うんだっけ」