数学の宿題で出された問題をいつもの倍の時間をかけて片付けると、わたしはノートを閉じてため息をついた。
夕飯を食べているときも、お風呂に入っているときも、わたしの頭の中は高槻くんでいっぱいだった。
これまでずっと彼を見つめてきたはずなのに、何をしていても頭から離れないなんて、はじめてのことだ。
注がれたやさしい瞳と、かたちのいい額。
わたしだけに向けられた視線を思い出すと、それだけで胸が苦しくなる。
あれは罰ゲームなのだと、何度自分に言い聞かせても、となりを歩いていた彼の気配は消えない。
だけど、明日からはもう、彼は迎えに来ない。
結局高槻くんも、大勢の生徒の前でわたしと並んで歩くことに耐えられないのだ。
わたしとふたりの時間を過ごすなんて、罰ゲーム以上の苦痛をともなうに違いない。
それが、あたりまえの感覚だ。


