朝子は結局作業をほとんど手伝わないまま、下校時刻にさっさと帰宅してしまった。
わたしは係りの子に言われるまま作業をして、気がつくとほかの生徒は誰もいなくなっていた。
要領の悪い自分にため息をつきながら教室に鍵をかけ、ローファに履き替えて外に出ると、遠くの空が赤くにじんでいた。
真夏と違って、昼間の日差しがやわらげば、風が心地いい。
ぽつんと明日のお祭りを待っている学園祭の看板に気を取られていたわたしは、校門から伸びる長い影に気づいて、足を止めた。
石の門に寄りかかって赤く燃える空を見つめている人影。
逆光で顔はわからないのに、背の高さや、たたずまいから、それが誰だか分かってしまう自分が腹立たしい。
顔を伏せ、気づかないふりをして通り過ぎようとしたら、
「小塚」
呼び止められて、わたしは足を止めてしまった。


