それでもキミをあきらめない



 
小学校4年生のときまで、わたしは活発でまわりにも友達がたくさんいた。
 
勉強こそ得意ではなかったものの、体育の授業では活躍していたし、女子をいじめる男子に立ち向かっていったこともある。
 

毎日友達と遊んでいて、ひとりでいる時間なんて、一秒だってなかった。
 

遠い遠い色鮮やかな記憶に、くらい影を落とすのは、中学の制服を着た爆弾だ。
 

兄は中学1年の頃、下校中に小学生を殴った。

その少年がなにげなく蹴った石が、足にぶつかったせいでキレたのだ。
 
一部始終を見ていたわたしは翔馬に食ってかかった。
 

それまで、兄はキレてもわたしに暴力をふるったり、危害をくわえたことがなかったから、心の中では安心していたのかもしれない。
 
そのときも、翔馬はわたしに手を出さなかった。

その場を離れて、大人しく帰っていった。
 


でもその日から、兄はわたしを名前で呼ばなくなった。