朝子はおそろしく平等で、公平な価値観を持ってる。
だからこそ、誰も、彼女と仲のいい友達には、なれないのかもしれないけれど。
それでも、わたしは彼女と一緒にいることで、いつも救われてる。
「あんなバカ兄の言うことなんて、あてになんないし。そもそも適当に言ってるに決まってるから」
「どうしてそんなに兄を嫌うんだ」
ふと、朝子と目が合った。
「中学時代に上の兄弟が荒れるなんてよくあることじゃないか。奈央が他人と距離を置く理由にはならないと思うが」
「それは……まあ、いろいろあって」
語尾をにごして目を逸らすと、朝子は「そうか」とだけ言って、もうわたしには興味を失くしたみたいに、ふたたび参考書をめくりはじめた。


