「奈央のお兄さん。おもしろいことを考え付くなと思って」
兄の含み笑いが脳裏をかすめた。
――復讐してやれよ
もったいぶるように吐き出された提案は、わたしの頭の中のゴミ箱に入ったままだ。
「告白された。罰ゲームだった。そうなれば当事者の関係なんてそれきり断ち切られそうなものなのに。復讐という形でつながっていようなんて、おもしろい」
そう言って、朝子はひとりで納得している。
彼女の言っている意味が、わたしにはさっぱりわからなかった。
いったい何がおもしろいのか。
それでも、わたしをバカにして楽しんでいるわけではないことはわかる。
常にぶっきらぼうな彼女だけど、それはたんに他人に関心がないだけで、自分以外の人間を上とか下とかに見たりしない。
馬鹿で地味ブスのわたしのことさえ、クラスの華やかなグループの子たちと同じ、女子というくくりに入れてしまっている。
