存在感がない、という理由でお化け役をやらされることも覚悟していたけれど、脅かし役として特殊メイクを受けるのは男子だけらしい。
ゾンビやドラキュラ、のっぺらぼうにひとつ目小僧。
いろんな国のお化けが仲良く登場するお化け小屋を、おどろおどろしく演出するための背景を描きながら、わたしは休む間もなく口を動かしている。
「それで一緒に登校したら、視線の数がハンパないの。あのグループのひとたち、毎日あんな視線浴びてうざったくないのかな」
わたしの身に起きた出来事を、ひたすらしゃべり続けた。
聞き手から相槌も質問もないから、まるでひとりごとみたい。
「ていうか、わたし本当にバカだよね。告白されて信じられないって思ったくせに、結局真に受けちゃって」
悲しすぎる過去は、笑い話にしたほうが傷が浅い。
背中を壁に預け、足を床に投げだした格好で、朝子は参考書をめくる。
ぱらり、と乾いた音がするたび、心が削りとられるように、むなしさがこみ上げた。
「本当にバカだ、わたし」


