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割り振られた仕事は、『可』も『不可』もない程度に終わらせる。
学校で目立たない存在でいるためには、『ほどほど』を習得することが大切だ。
とはいえ不器用なわたしでは、持てる最大限の能力を発揮しなければ、人並みにも届かない。
そうなると、目立たない存在でいるために、結局はあらゆることに対して努力が必要になる。
下書きの線をはみ出さないように、わたしは細心の注意をはらって色をひろげていった。
机を全部空き教室に移動させてしまうと、教室の中はおどろくほど広い。
からっぽな木目調の空間は、巨大な木の幹にぽっかりとあいた洞穴みたいで、巣穴作りにいそしむリスのように、生徒たちがそれぞれ作業を行っている。
模造紙を黒く塗ったり、衣装づくりのために布を裁断したり。
教室のあちらこちらで学園祭の準備が進められている。
わたしたち1年2組の出し物は『お化け屋敷』だ。


