きっと、罰ゲームのことさえ知らなければ、わたしはどんな針のむしろのなかでも、隣に高槻くんが立っているだけで幸せだったはず。
 
そんなことを考えて、また悲しくなった。


「あ、あの、じゃあ、ここで」
 

校門をくぐったところで、わたしはとうとう声をだした。
 
不思議そうな顔をしている高槻くんに、無理に笑いかける。


「わ、わたし、職員室に寄ってくから」
 

頬の痙攣を見破られる前に、背中を向けてその場から離れた。
 
登校する生徒たちのあいだを縫い、小走りで生徒玄関を目指す。
 

沈黙から解放されても、心臓の鼓動は激しいままだ。
 
数メートル走ってから、ようやく息をついた。
 

でも安堵したのもつかの間、後ろの方から大きな笑い声が響く。