殻はなかった。 それは、わたしが勝手につくり出していただけだった。 目に見えない、実体すらない殻のなかに、 自分から閉じこもっていたにすぎない。 人と接することに怯えて、自分からバリアを張っていたんだ。 なかった。 殻なんて…… はじめからどこにも、 存在してなかった―― 涙ににじんだ視界で、指先に触れた高槻くんの体温だけが鮮明だ。 わたしの手をきつく握り締めて、高槻くんが言う。