――お前を救えるのは、お前だけだ。 不意に翔馬の声が思い出されて、わたしは、おそるおそる手を伸ばした。 正面に立つ、高槻くんに向かって。 外の世界にいる彼の手に触れるように、 わたしを覆う、堅い殻を突き破るつもりで。 そしてわたしの指先は、何の抵抗もなく宙を舞い、 高槻くんの手に触れた。 彼のしめった、温かなぬくもりが、指先から流れ込んでくる。 こんなことが……あるだろうか。 頬を、涙が一粒、音も立てずに落ちていく。 わたしは、はじめて気がついた。