いつのまにか息を止めていたわたしは、細く、震えながら吐息をはいた。
わたしを見つめたまま、高槻くんが優しげに目を細める。
「俺を救ってくれたのは……」
君だよ、と。
低い声が、告げる。
公園を渡っていく乾いた風が、わたしの長い髪をさらっていく。
ひんやりした空気のなかで、心臓からから送り出された熱い血液が、
一瞬で身体中にめぐって、指先まで熱を伝える。
ブランコの柵によりかかって、地面に長い足を投げ出してる、目の前の彼が、
ずっと昔、わたしが兄からかばった、男の子だっていうの――?
「わ……わたし」
どんなに頭を働かせても、
あのときうずくまっていた少年の顔には、薄いモヤがかかったまま。


