『ねえ、弱い人が強くなって誰かを助けたら、その助けられた人はまた強くなって、誰かを助けると思わない?』
「え?」と眉をひそめる高槻少年に、少女は屈託なく笑いかける。
『わたしが最初のひとりになる。だからキミは、ふたり目ね』
弱いものが、強いものへ取って代わるための連鎖のはじまり。
頭の鈍い彼女なりに考えた、むちゃくちゃな方法。
あっけにとられて座り込んでいる男の子に、強引に小指を絡ませて、
少女は言ったのだ。
『きっとできる。ねえ、約束しようよ』
目の前の滑り台を勢いよく下り、砂場で転んで、砂だらけになった少女――奈央が、
汚れた顔を上げて、わたしに明るく笑いかける。
太陽みたいな、冷たい風を吹き飛ばしてしまうような笑顔に、鼓動が高鳴る。
こんなふうに笑ってたの……?
あの頃のわたしは――


