――弱い者イジメすんな、バカ兄!
身体が硬直する。
まばたきもできなかった。
いまよりバカで、怖いもの知らずだった小学4年生のわたしが、
公園のなかを元気いっぱいに走り回る。
「すっげー恥ずかしかったよ俺。女の子に助けられるなんてさ」
高槻くんの顔がくしゃっと崩れて、喉の奥が締め付けられた。
声を出したいのに、かすれた吐息しか出てこない。
「俺がしりもちついたまま動けないでいたらさ、たぶんその子、俺が怯えてると勘違いしたんだろうな」
その女の子は小さな高槻くんに駆け寄り、まっすぐに目を合わせて言った。
高槻くんの低い声で、少女のセリフが、公園の冷えた空気のなかに舞う。


