猫の抜け道のような、人がひとりやっと通れるような狭い道を抜けると、公園に出る。
それは、わが家から一番近い場所にある、大きな滑り台のある公園だった。
「どうして……?」
公園の入り口で立ち止まった背中に、思わず声をかけてしまう。
この場所に辿りつくためには、普通なら、大通りに沿って遠回りをしなければならない。
「なんで、高槻くんが、この道を知ってるの……?」
高槻くんがいま住んでいるのは、となり町だ。
このあたりの地理まで把握しているとしても、この道を知っているはずがない。
高槻くんが当たり前のように通ってきたこの道は、
ごく近所に住む子供たちだけが知っている、秘密の抜け道なのだ。
公園の敷地に入ると、彼ははじめてわたしを離した。
手のひらからぬくもりが消えたとたん、急に不安がこみ上げて、
それを隠すために、わたしは両手を握りしめた。
すると、正面に立っていた背中が、ゆっくり向き直る。


