「小塚奈央だけは譲れないって言ってんだよ!」
わたしと星野彗がふたりで目を丸めているあいだに、
振り向いた高槻くんに、わたしは腕を取られていた。
「悪いな、セイ」
短くつぶやき、高槻くんはイチョウが舞い落ちる黄色の通りを走り出す。
「おいレオ! うわっ」
追いかけてきた星野彗は、地面に落ちた葉に滑って体勢を崩した。
そのあいだに、高槻くんは落ち葉を蹴散らす勢いで通りを走って、走って、走って、
わたしの腕を強くつかんだまま、そのくせ一度もわたしを振り返ることなく、
風を切るように、走り続けた。
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