ふだんおかしなことばかり言ってるから、ちょっと他人を気遣う仕草を見せるだけで、
いい人に見えてしまうという、ミラクルかもしれない。
でも、実際一緒にいるようになって、星野彗の印象は少し変わった。
もっと他人を見下したような、プライドの高い人かと思っていたのに、
当の本人は子供みたいに無邪気で、いい意味でも悪い意味でも素直だ。
「今日こそ放課後デートしたかったけど、やめといたほうが良さそうだね」
ほどけるような笑い方に、胸がちくりと痛む。
星野彗は、本気でわたしを心配してくれてる。
学校の校門を抜けるとすぐにイチョウ並木が続いていた。
真っ黄色の葉が地面に散って、かさかさと風に舞い上がる。
「星野くん」
いたたまれなくなって、わたしは足を止めた。


