「頭わりぃくせに要領だけはよくてさー、いつも俺ばっか親に怒られてて、すっげームカついてた」
じわじわと溜まっていった苛立ちと、学校や家でのストレスが膨れ上がって、
中学のときに感情を抑えられなくなったのだと、翔馬は言った。
突然キレて窓ガラスを割ったり、道ばたの小学生を殴ったり……。
「いま考えると、俺も思春期だったんだなぁ」
ずいぶん荒々しい思春期だ、とわたしは口の中でつぶやいた。
たった漢字3文字の言葉で、わたしの人生を狂わせたことはチャラになってしまうのかな。
「お前にも悪いことしたって思うけど、でもな」
兄はだらしなく組んでいた足を下ろして、ベッドのわたしに近づくように、わずかに身をかがめた。


