昨日の夜、夕飯が済んだあとで、翔馬はわたしの部屋にやってきた。
わたしはそのとき、高槻くんの必死の叫びが頭から離れなくて。
――それでも、俺は、君をあきらめない。
高槻くんが、あれほどわたしに執着する意味が分からず、何も考えられなくなっていた。
そんなふうに、ベッドに突っ伏したままぼうっとしているわたしに、兄は言ったのだ。
「俺、お前のこと、嫌いだったなぁ」
つい「なにそれ」と口にしてしまうくらい、脈絡のない言葉だった。
机から椅子を引き出してどかっと座り、翔馬は遠くを見るように話し始めた。
「そうとう昔のことだけど、お前、すげー周りに友達がいたじゃん」
それは、小学4年生くらいまでの話だ。
何を話し始めたのかとぼんやり思いながら、
わたしはマクラに突っ伏したまま兄の声に耳を傾けた。


