涙が落ち着いたころ、ちょうど担任の先生がやってきて、
わたしは前のドアをくぐる先生と同じタイミングで後ろの扉を抜けた。
担任が現れてくれたおかげで、わたしは大量の視線を浴びずに自分の席までたどり着くことができた。
何事もなかったように参考書を広げている朝子に、ちいさく「おはよう」と言うと、
朝子はちらりと横目でこちらを見た。
「おはよう奈央。今日はずいぶんぎりぎりだな」
「う、うん。ちょっと寝坊しちゃって」
小声で話しながら席に着く。
朝子はいつもと全然変わらなかった。
不愛想だし、人と話しているときでも片手間に参考書をめくっているし。
そんな普段通りの様子に、余計胸が熱くなる。
わたしは朝子のことを、なんにも分かってなかったんだな……。


