「奈央ちゃん?」 星野彗に覗き込まれ、あわてて顔を逸らす。 「どうしたの」 「な、なんでもないよ」 涙がこぼれそうになって、わたしはポケットからハンカチを取り出した。 その瞬間、目元を拭おうとした手をつかまれる。 「……泣いてるの?」 振り向くと、すぐ傍に星野彗の顔があった。 少しの隙もない整った顔を、悲しげに歪めて、彼は身を乗り出す。 よける暇もなかった。 形のいい唇が、目に焼き付いて、 次の瞬間、濡れた生温かい感触が、頬をなぞる。 わたしの目からこぼれた涙を、真っ赤な舌が――